いわさきちひろ「制作現場アトリエの発見」(ちひろってどういう人だと思う?)
ワークショップの目的・・・・・・・
◆いわさきちひろとの出会い
◆制作現場の発見
(1)絵本を読みきかせて作家について知る
いわさきちひろってどういう人だろう?
きっと、絵本とかカレンダーとかコーヒーカップで見たことあるんじゃないかな?、繊細でみずみずしい水彩画を生み出しました。
『おふろでちゃぷちゃぷ』『あめのひのおるすばん』『ことりのくるひ』『戦火のなかの子どもたち』、たくさん絵本を描いたよ。
さっそく『ことりのくるひ』を読んでみよう。
(たくさん絵本があるので、好きな本を読み聞かせるといいと思います)
(2)ワーク
今日は、いわさきちひろの美術館に行こう!
ちひろのアトリエが公開されてるね。アトリエには絵がたくさんあって、いつも使っていた画材がテーブルに、お茶のセットがソファに、お人形が本棚に飾られてる。アトリエを見ながら、ちひろってどういう人か想像してみよう。
今日は、いわさきちひろの美術館に行こう!
(3)作家・作品との出会い、発見
森のおくでことりがないていて、とてもしずかなところにいそう。おだやかな人。ほんがすきそう。図書かんに一人でいそう。
雪ぐつみたいなのがあるから、よく雪のばしょへでかけてたみたい。
自分のまわりに自分のすきなものをおく人。
ゆったりせいかつしていろいろな絵をかいてげんきに絵をかいていたと思う。
せのひくい人 にんぎょうがすきな人 植物がすきな人
ものを大切にする人だと思う
絵をいっぱい描く人だと思う
花が好きみたい
他の人がつまらないと思うものにおもしろさを見つける人
(ちひろ美術館・東京「ちひろ画法のテクニック」(2006年夏に行きました))
ワークショップの解説
(1)企画の意図
①アトリエ、持ち物から作家の人物を知る
美術館ではよく、作家のアトリエが公開されていたり、持ち物が展示されています。
そういう身近なものを見て、どんな人だったかを考えてみると、それによって作家が親しいものとなります。
作家の伝記や解説がまだ読めない子どもでも、ものを見て考えることができるので、美術館に行ったら館内でおすすめしたいワークショップです。
(2)所要時間
15分
(3)応用例
①持ち物から作家の人物を知る
今回は復元されたアトリエで実施しましたが、持ち物でもできそうです。藤田嗣治の展覧会で、小物入れらしい木の箱のデザインがかわいらしく、こういうものが好きな人だったんだなぁと思ったことがありました。
また、森村泰昌は丸亀市猪熊弦一郎現代美術館に展示してあるこまごまとしたものが私も好きで、と書いています。
以前教室で石井桃子展に行ったときに、「うちにあるのと同じだ!」とある子が興奮気味にゆびさしたのは、広辞苑でした。作家と同じものを持っている、そんなことから親しい気持ちがするものです。
(4)使用した本
『ことりのくるひ』
(岩崎ちひろ 作 至光社)
(5)アフターミーティング(ワークショップ後の気づき等)
「雪ぐつがあるから、雪の場所に行ったみたいだ」という発見のときには、ちひろは長野に別荘を持っていたんだよ、という話をしました。最初から解説するより、自分の発見につながりのあることがらを知るほうが、興味が深まるのではないでしょうか。
「背が低い人」という子がいたので、「え、どうしてそう思うんだろう?」と内心驚いたのですが、どうやら台の上に座卓を置いているからのようです。ナルホドー・・・よく見てるネ! いろいろな意見をどんどん出していいという雰囲気づくりが大切です。
ガレ「工芸品との出会い」(家族にプレゼントをえらぼう)
ワークショップの目的・・・・・・・
◆ガレとの出会い
◆工芸品との出会い
(1)本、画集を読みきかせて作家について知る
ガレってどういう人だろう?『光の魔術師―エミール・ガレ』で、ガレの作品を見てみよう。
フランスのアール・ヌーヴォーの巨匠で「光の魔術師」と呼ばれている。ガラス製品を作った人だ。きれいだね。
植物学を学んだので、虫や花をモチーフしているよ。
日本の美術品がヨーロッパで注目されていた頃で、ガレも日本の美術品が好きだった。
(2)ワーク
今日は、ガレの展覧会だよ。ここに展示してあるものを家族にプレゼントするなら、どれをだれにあげる?
(3)作家・作品との出会い、発見
お母さんに≪人物群像飾り時計≫
お母さんはシベリアンハスキーとか大きい犬が好きなので、犬がついているし、お母さんは花も好きなので、花もついているので、選びました。
お父さんに≪グラジオラス文楽譜棚≫
お父さんは、レコードを聴くのが好きなので、レコードを置いてほしいです。
お姉ちゃんに≪トランプ文リキュールセット≫
かわいいからです。
お兄ちゃんに≪花器ソーダ≫
ソーダが好きそうだからです。
おじいちゃんに≪酒器セット≫
おじいちゃんは少しだけどウィスキーを飲むので、小さいグラスをあげたいです。
おばあちゃんに≪芥子文花器≫
花が好きだからです。
ママに≪すみれ文ゴブレット≫
ママはむらさき色がすきだから。
パパに≪蓋付ゴブレット≫
パパは黄色が好きだから。
さっちゃんに≪トランプ文リキュールセット≫
かわいい。
おじいちゃんに≪酒器セット≫
おじいちゃんがお酒を飲むから。
(目黒区美術館「エミール・ガレの生きた時代−近代生活のエレガンス」(2010年春に行きました))
ワークショップの解説
(1)企画の意図
①作品とコミュニケーションする
美術館に行くと、一つ一つの作品の前で、「この絵は、うーむ・・・」とかなんとか立ち止まって鑑賞せねばならないのではないか?と思いがちです。それは、絵から自分が受けることを待っている、絵からベクトルの矢印が一方的に出るイメージです。
でも、「この部屋の中で一番好きな絵どれだろう?」と考えながら観ると、自分のほうからも矢印が出ます。絵とコミュニケーションすると、楽しく絵が観られます。
②いろいろな鑑賞視点をもつ
さらに、誰かのプレゼント選びをするとなるとワクワクしてくる上に、自分はそれほどでもないけどあの人なら気に入りそうだ、という視点が加わって、これはあんまり・・・なんて思わなくなって、美術館が楽しくなります。くわしくは美術館にあるものどれでも一つくれると言われたらどれがほしい?
それに、自分とは違うものを他の人が選んでいるのを見ると、そうか、いろいろ好みがあっていいんだなと思います。
③工芸品の特徴を知り、実感する
工芸品の特徴は、使うものという点です。どう使うか、いつ使うか、だれが使うか。だれかにプレゼントを贈ろうとするときに、そういうことを想定する視点が生まれます。ワークショップを通じて自然に、身近な生活の中にも芸術があることを伝えられたらと思います。
(2)所要時間
鑑賞時間を含めて1時間
(3)応用例
①自分のために選ぶ
自分に選ぶのもいいです。プレゼントを選ぶというのでもなくても、この中で一番好きな絵はどれ?というのは、美術館で簡単にできるワークショップです。
(4)使用した本
最初、プレゼントをあげるのは一緒に暮らしている家族だけにしようかなと思っていたのですが、ワークショップをすすめるうちに子どもたちが興にのって「じゃあ、近くに住んでいる叔母さんにも選ぼう」「ウチのおじいちゃんとおばあちゃんにもあげたんだから、もう一人のおじいちゃんとおばあちゃんにもあげよう」と、対象をどんどん広げてプレゼント選びに夢中になっていったのは、とてもおもしろいことでした。
ワークショップでは、まず自分に3つ選んで、そのあとで家族に1つずつ選ぶように言ったのですが、自分に選んだ3つのうちからパパとママの分も選ぶ子もいれば、自分のとは別にそれぞれプレゼントを選んでいる子もいて、プレゼント選びって、ほんとうに性格が出るなぁと思ったことです。なるほど、この子は自分が好きなものをあげるタイプか、で、この子は相手の好みを考えるタイプね。ちなみに私もやってみたのですが、私は後者のタイプです。
ゴーギャン「色の感覚に鋭くなる」(色の魔術師ゴーギャンの色ってどんな色?)
ワークショップの目的・・・・・・・
◆ゴーギャンとの出会い
◆ゴーギャン≪神の日≫との出会い
◆色を自分でつくる喜びを知る
(1)本、画集を読みきかせて作家について知る
ゴーギャンってどういう人だろう?
ゴーギャンは「楽園」を求めて、ずっと旅をした人でした。ブルターニュ、マルチニーク島、南仏アルル、二度のタヒチ行き。人間の生と死、文明と野蛮といった根源的な主題にいきつきます。
「色の魔術師」ゴーギャンの特徴は、強烈な色彩感にあります。彼ほど原色を多用し、豊かな色彩配置にこだわった画家はいません。(『ゴーギャンの絵本―はだしになって』)
(2)ワーク
ゴーギャンの作品≪神の日≫の水は、いろんな色が使われてるね。この色をそっくりに描いてみよう。こういうのを模写って言うんだよ。今日は、形はあまり細かく描かなくていいよ、そのかわり色はよーく見てね。
できた?
(3)作家・作品との出会い、発見
それで描きおわって、どう? 模写していて発見したことってどんなこと?
クレヨンを使ったり絵の具を使ったり、画材をいろいろためしたみた。
色を絵の具でつくるときに、ちょっと色を足すだけですぐに変わってしまうのがむずかしかった。
色がくっきりしているところと、色がまざっているところがあった。
すごく時間がかかった。ゴーギャンも時間がかかったと思う。
この水は、ふつうの水じゃないと思う。
水の底になにがあるんだろう。
水から何か出てきそう。
(東京国立近代美術館「ゴーギャン展」(2009年夏に行きました))
ワークショップの解説
(1)企画の意図
① 美術作品と接する時間を多くかける
絵となかよくなるには、その絵とつきあう時間を多くかける、それは絵となかよくなる方法の一つです。模写をすると、その絵をじっくり観ることになります。
②作品の特徴を体験する
ゴーギャンの色はとてもきれい。特にこの作品は、水の部分にいろいろな色が使ってあります。あまり形にこだわらず、色だけに注目したワークショップにしました。
(2)所要時間
1時間×3〜5回(個人差があります)
(3)応用例
①色以外に注目した模写
今回は色に注目したワークショップでしたが、色ではなく点描の大きさや向きに注目したのが、ゴッホのワークショップです。ゴッホ「点描の発見」(点描ってどんなふうに描かれているんだろう?)模写をするときにも、視点を与えると集中しやすくなります。
(4)使用した本
『ゴーギャンの絵本―はだしになって』(ゴーギャン、結城昌子 作 小学館)
(5)アフターミーティング(ワークショップ後の気づき等)
形はそれほど気にしないでやってみようとしたのは、あまり時間がかかりすぎて飽きてしまうと本末転倒だからです。が、くっきりした形が好きな子は、結局ほかの子の3倍も時間をかけて取りくんでいました。かと思うと、何度も色のためしぬりをして色の研究をしている子がいたり、違った画材をいくつもためす子もいたり。模写と一口に言ってもいろんなやり方があるし、できあがったものはそれぞれの味が色濃く出ているものです。
模写を通して、この水がどういうものかはっきりとはわからないけれど、普通の水じゃないことがわかる。ゴーギャンがタヒチで感じた驚きが自然と伝わるワークショップになったと思います。
シャガール「シャガール作品とオペラ『魔笛』との出会い」(「夜の女王」の衣装デザインをしよう)
ワークショップの目的・・・・・・・
◆シャガールとの出会い
◆オペラと『魔笛』との出会い
◆衣装デザインの発見
◆役の解釈と表現というプロセスを体験する
(1)本、画集を読みきかせて作家について知る
シャガールってどういう人だろう?
シャガールはロシアで生まれた。
ベラという奥さんをとっても愛していて、ベラと自分をモチーフに恋人たちの絵をたくさん描いているよ。(『シャガール―わたしが画家になったわけ』)
あざやかな色使いのため「色彩の魔術師」ともよばれている。まるで夢の中にいるような不思議な絵は世界中の人々から愛されている。(『シャガールとあそぼう!』)
絵画だけではなく、教会のステンドグラスやオペラの舞台美術も手がけた。
とくに、王子様や魔法使いが出てきたり動物達が踊ったりする愉快なお話の『魔笛』は、ファンタジーの世界を描くシャガールとぴったりだった。
(2)CDを聴いて、オペラの登場人物「夜の女王」を知る
シャガールは、オペラ『魔笛』の衣装デザインをした。衣装デザインというのは、演劇の役柄にふさわしい衣装を考えること。夜の女王は力のあるこわいこわい魔女。まずは夜の女王のアリアを聴いてみよう。
♪夜の女王のアリア「復讐の心は地獄のように胸に燃え」
地獄の復讐がわが心に煮えくりかえる
死と絶望がわが身を焼き尽くす
(中略)
聞け 復讐の神々よ 母の呪いを聞け
(3)ワーク
じゃあシャガールと同じように、「夜の女王」の衣装デザインを描いてみよう。
ピカソ「キュビズムとの出会い」(きみの≪泣く女≫、ピカソの≪泣く女≫)
ワークショップの目的・・・・・・・
◆ピカソとの出会い
◆ピカソ≪泣く女≫の発見
◆キュビズムとの出会い
◆感情の発見
(1)本、画集を読みきかせて作家について知る
ピカソってどういう人だろう?
20世紀を代表する巨匠パブロ・ピカソ。スペインで生まれ、フランスに制作拠点を移し91歳まで生きた。
ピカソは91年の生涯を通じて常に新しい表現に取り組みました。めまぐるしく変化する作風は、それぞれ「青の時代」「バラ色の時代」「アフリカ彫刻の時代」「キュビズム」「新古典主義」と呼ばれている。(『ピカソとあそぼう!』)
ピカソは小学生が知っている画家トップ3に必ず入るけど、でも実際に見たことがある人は少ないのでは・・・?
(2)ワーク
ピカソって天才って言われているけど変な絵だよね。でもね、同じテーマで絵を描いてみると、自分でいろいろ工夫するから、きっとピカソだって同じように工夫したんだろうなって、よくわかるようになる。思ったより、変じゃないかも・・・・・・。
さっそくピカソの≪泣く女≫を見てみよう。
どんな人? 何歳ぐらい? なんで泣いているんだろう? ワーワー泣いてる? しくしく泣いてる? どこで泣いてるんだろう? 悲しいのかな、それともうれしいのかな?
今度はきみの番。きみなら「泣く女」どう描く?
材料はこれだよ。
画材 画用紙
ピカソの「泣く女」は、広い部屋で、明るいところで泣いていると思う。友達と住んでいると思う。
わたしの「泣く女」は、春に、桜がさいている公園で、友達と別れてさびしくて泣いている。
ピカソの「泣く女」は、だれかがしんじゃってそれがくやしくてないている。
わたしの「泣く女」は、まい子になった友達がきけんにさらされているような気がしてないている。
ピカソの「泣く女」は、とてもくやしくてハンカチをかんでポロポロなみだをながしている。へやのすみのかげでないている
わたしの「泣く女」は、大人で、ふくが雨でぬれてしまうのでしくしくないている。そして布をかさがわりにしている。
ピカソの「泣く女」は、くやしくて、キーッと泣いている。ポロポロなみだをながして、声をださずに、ハンカチがボロボロになるまで泣いたと思う。次の日は、目がものすごくはれてしまったと思う。ケンカで、ものすごくやられてくやしくて泣いていると思う。
わたしの「泣く女」は、まだ小さくて、三歳くらい。公園でまだ遊びたくて、わぁんわぁんと泣いている。友達とあそびたかったけどもうかえらなきゃいけなくて、泣いていた。お母さんはおこっておいていこうとしたらもっと大きな声で泣いた。
ピカソの「泣く女」は、色の部分からは明るく見えるが、少し残酷に思える。堂々と泣いている。憎しみを見た感じ。髪の毛一本、一本が色とりどりで楽しい部分もある。目、まゆからはとても悲しそうに見えるが、全体としてそう悲しんでいるようには思えない。
わたしの「泣く女」は、現実では一人だが、昔のことを思い出している黒、むらさき、青の部分はカーテンのようなもの。一人で悲しく泣いている。
(国立新美術館「巨匠ピカソ 愛と創造の軌跡」2008年秋実施)
ワークショップの解説 ピカソとあそぼう! (チルドレンズ・ミュージアムアートシリーズ)
(1)企画の意図
①同じテーマの絵にとりくむことで、能動的に鑑賞できる
安野光雅がテレビの番組で、ゴッホが描いた同じ場所で同じ風景を描いていたので、同じテーマで描くという着想をえました。フランスに行くわけにはいかないけど、「泣く女」なら子どももよく知っているテーマですからね。
同じテーマの絵にとりくむと、作品との共通点や違う点に敏感になります。
②気持ち、感情に気づき、表現する
佐藤忠良の図工の教科書に「えはきもちをおはなしします」とありますが、直裁的に感情を表現することで、人のさまざまな感情に気づきます。
(2)所要時間
1時間×1〜2回
(3)使用した本
泣く様子もいろいろあります。シクシク、ワーワー、ギャーギャー、グスングスン、声を出さずに。
泣く理由もいろいろ。悲しい、うれしい、怒って、悔しくて、びっくりして、わけもわからず。
そんなことを考えながら取り組むので、その子の考えが絵に出てきて、気持ちが入りやすいテーマでした。
泣く女は、小さい子でも大人でもいいよ、と言うと、自分に近い子どもをテーマにする子、昔の自分を思い出して書く子、自分とはまったく別の人を描く子、といろいろでした。
いわさきちひろ「新しい画材パステルとの出会い」(パステルで自画像を描こう)
ワークショップの目的・・・・・・・
◆いわさきちひろとの出会い
◆新しい画材パステルとの出会い
◆自画像の発見
(1)絵本を読みきかせて、絵に描かれた表情を発見する
いわさきちひろってどういう人だろう?
絵本を中心に活躍した日本の画家。絵本のさし絵も描いたし、文章と絵の両方を書いた絵本もあるよ。その絵は多くの人びとから愛されている。子どもを生涯のテーマとして描き続けた。
50代になってパステルを使った画法に挑戦し、絵の可能性をさぐり続けた。パステルを使った絵の絵本『となりにきたこ』と『戦火のなかの子どもたち』を読もう。
この子はワクワクしているみたい。この子はつまんなそう。
この子はどんな気持ちかな。どう思う?気持ちが顔に出ているよ。
(2)ワーク
いわさきちひろは51歳ではじめてパステルを使いはじめた。
みんなも同じパステルを使って、自分の顔を描こう。
顔が似てるより、どういう表情か、というのがポイントだよ。
まず、どういうときの表情かを決めて、鏡の前でやってみる。それを見ながら感じを出すように描こう。
材料はこれだよ。
パステル ・ 画材 画用紙 鏡
できた?
(3)画材の発見
パステルは画用紙の上をなめらかにすべる
えんぴつで描くより大きく描きたくなる
やわらかい
すぐ手につく
(ちひろ美術館・東京「ちひろ51歳の挑戦」2010年夏実施)
ワークショップの解説
(1)企画の意図
①作家と同じ画材を使う
ちょうど美術展のテーマが、パステルに挑戦したいわさきちひろだったので、このようなワークショップを企画しました。展覧会がきっかけで使ったことがない画材を使う、というのも楽しいことです。パステルの使用感を楽しむことを主眼としました。
②自画像で表情を描く
ちひろは自分ではなく子どもを描きましたが、ワークショップでは鏡で自分の顔を見て描きます。
たいていの人が思っていることですが、子どもは人の顔を描くのが難しいと思っています。それで自画像というと、いやだなぁとなかなか取りくめなかったり、ポスター風の作り笑顔の絵になったり、極端に細すぎる首と大きすぎる目のどこかで見たような絵のまねになったりします。でもそもそも自画像とは、その人の気持ちを表現するものです。顔が似ているかではなく、表情を描くことをめあてにしています。
(2)所要時間
1時間×1〜2回
(3)応用例
①作家と同じ技法で描く
ちひろと同じマーブリング手法を使うワークショップもできます。例えばこんな絵を描きました。
いのしし
(4)使用した本
表情を描いてね、と何度も強調したので、いろいろな表情がでました。それぞれの感情の背景にはそれぞれ具体的なシチュエーションがあって、たとえば「ガマンしている顔」はおもちゃを買ってほしいのにお母さんにだめと言われたところ、「なんだこれ?」ははじめてライムが食卓にのぼったときの驚きだということです。生き生きしたくらしが絵の背景にあって、こういうのが絵を描くってことだなぁとあらためて感じました。
ワークショップ後に行った美術館では数十色のパステルが展示してあって、あ、おなじのだ、という声が上がりました。
岡本太郎「≪太陽の塔≫の発見とコラージュとの出会い」(太陽の塔をつくろう)
ワークショップの目的・・・・・・・
◆岡本太郎との出会い
◆≪太陽の塔≫の発見
◆アイデアスケッチを体験する
◆大きな制作物を体験する
◆コラージュ技法との出会い
(1)本を読みきかせて、作家について知る
岡本太郎ってどういう人だろう?
岡本太郎は、日本の芸術家。
大阪万博のときに≪太陽の塔≫を作った。
それとペアの巨大壁画≪明日の神話≫を作った。これは、最近みつかったものだ。
「芸術は爆発だ!」という言葉がとても有名になった。
絵画、彫刻、椅子、食器・・・、ほんとうにいろいろなものをつくった。(『岡本太郎 明日の神話06.7.8-8.31』)
(2)ワーク
岡本太郎は、1970年、今から40年前に、万博会場に巨大な≪太陽の塔≫を作った。塔の前に2つ、後ろに1つ太陽がある。これは本当に大きくて、中に階段があって、人が上れるぐらいだったんだよ。
今日はみんなも「太陽の塔」を作ろう。
ところでみんなは、塔というとどういうのを思いうかべる?
高い塔の上におひめさまがとじこめられたり、時計がついていたり。東京タワーも塔だね。
世界にはいろいろな塔があるよ。
まず、アイデアスケッチをしよう。いろいろなアイデアをどんどん出していこう。
できた?
次に、その中から一つ選んで身長ぐらいある大きな模造紙にコラージュでつくろう。
ちぎった紙や切った紙を貼る、クレヨンで描く、水彩絵の具で描く、うえから色えんぴつで描く、いろいろやってみよう。
作っていくうちに思いついたことはどんどんやっていいし、変更してもいい。
材料はこれだよ。
画材 模造紙 はさみのり
(東京国立近代美術館「岡本太郎 生誕100周年記念展」2011年春実施)
ワークショップの解説
(1)企画の意図
①芸術家の制作過程を体験する
岡本太郎の≪太陽の塔≫アイデアスケッチが、美術館で展示されています。
ワークショップでも、同じようにアイデアスケッチをするプロセスを組みこみました。作家が身近に感じるきっかけにもなります。
②からだ全体を使った制作を体験する
岡本太郎は、≪太陽の塔≫と壁画≪明日の神話≫とはペア作品と考えていたようです。≪太陽の塔≫も≪明日の神話≫も巨大さが特徴です。ワークショップでも、いつもよりも大きな絵を描くことで、からだ全体を使って描くという体験をします。
③コラージュにより即興的な制作を体験する
コラージュは、即興性が発揮しやすい手法です。写真や色紙を見ているうちに、あるいは紙をちぎったり貼ったりしているうちに、ふとアイデアが浮かぶので、即興的なおもしろさを感じることができます。
(2)所要時間
1時間×3〜4回
(3)応用例
①ねんどで作る≪太陽の塔≫
今回は大きな紙にコラージュで絵を描きましたが、ねんどを使って≪太陽の塔≫を作るのもおもしろそうです。
(4)使用した本
『岡本太郎 明日の神話06.7.8-8.31』(岡本太郎記念館/川崎市岡本太郎美術館)
(5)アフターミーティング(ワークショップ後の気づき等)
いつも数種類の色を使って細かく描きこむのが好きな子が今回は1色で面で描いていたり、広告の写真がおもしろいから貼ってみたくなってこうしたんだと言う子がいたり、と、コラージュならではの意外な絵ができました。
アイデアスケッチを他の子の2倍も描きすすむ子がいました。彼女は、太陽そのものと太陽とのかかわりという二つの異なる視点を見いだしているようで、アイデアがどんどん浮かぶことそのものが楽しそうでした。
頭であらかじめ考えたことじゃなくて、体を使っているうちにふと思いつく、そういう体験が少なくなっているのじゃないでしょうか。
美術館では、太郎の彫刻を指して「こういうの作ってみたい」と言っている子がいました。いつも美術館に行く前にワークショップをおこなっていますが、美術館に行った後におこなうワークショップもおもしろそうです。