フェルメール「コトバとカラダで絵にせまろう」(《真珠の耳飾の少女》を言語と身体で表現する)

ワークショップの目的
フェルメールとの出会い、《真珠の耳飾の少女》との出会い

(1)本、画集を読みきかせて作家について知る
フェルメールってどういう人だろう?
(『謎解きフェルメール』『フェルメールへの招待』で解説する)

オランダってどこにあるの? デルフトってどんなところ?
(『美術を巡る旅ガイド』で解説する)

(2)ワーク

美術手帖 2012年6月号増刊 特集 フェルメール

(1)この絵は《真珠の耳飾りの少女》というタイトルだけど、《青いターバンの少女》とも言われているんだ。
じゃあもし君だったらどんな題名にする? 絵のタイトルを自由に考えてみて。

(2)彼女、だれかとお話しているみたい。だれとしゃべっているのかな? セリフも考えよう。

(3)絵の少女と同じポーズをしてみよう。2人ペアになって、一人がポーズをとって、もう一人がポーズを直そう。首を傾けているところや、目の方向がむずかしいよ。
そう、これはね、ポーズをとるほうが「モデル」役で、直すほうが「画家」役なんだよ。

(4)絵のなかからいいと思う点をピックアップして体で表現してみよう。

(3)作家・作品との出会い、発見
できた?


(1)≪こちらを見る少女≫≪まちへでかけた女≫≪とおくを見つめる少女≫
(2)家族、友だち、まちで会った人、近所の人
「何買った?」(家族と) 「どこ行く?」(友だち) 「どうしましたか?」(近所の人) 「こんにちは」(近所の人)
(4)「ターバンの青色のところはやわらかい感じだけど、黄色いところはパサッとした感じ」「ほんわかとした太陽のあたりかた」「服はぼわっとした感じ」
「少女はとてもやさしい感じで動きものっとりとした感じだけどすっきりした面もある。」

このなかから一つ選び、カラダで表現した。
≪少女はとてもやさしい感じで動きものっとりとした感じだけどすっきりした面もある≫。



(1)≪ふり向く少女≫ ≪やまぶき色の服を着た娘≫
(2)お兄さん、友達、知り合い
「ねぇ行こう」(お兄さん) 「一緒に話そう」(友達) 「こっちに来てみて」(知り合い)
(4)「ターバンの長い部分のしなやかさ」「服のかたそうな感じ」「目のかがやきの様子」「ターバンのかげと光」
このなかから一つ選び、カラダで表現した。
このなかから一つ選び、カラダで表現した。
≪ターバンのかげと光≫



(1)≪ふりかえる娘≫≪私の恋人≫≪みつめる≫
(2)お母さん だれか親しい人
出かけようとしているところでお母さんに名前をよばれて、「ん?」とふりかえる。 「どこに行くんだい?」と言われたかもしれない。
親しい人となにかをたずねられて、「だって、・・・だもん」と、のんびり甘い声で答える。
(4)このなかから一つ選び、カラダで表現した。
「暗がりからうかびあがる様子」、「顔や真珠に光があたっている具合」、「しっとりした質感」、「青いターバンが巻かれている頭の感じ」。

このなかから一つ選び、カラダで表現した。
≪暗がりからうかびあがる様子≫


それじゃワークショップはこれでおしまい。フェルメールを観にいくのを楽しみにしてね。
東京都美術館マウリッツハイス美術館展」2012年夏に実施)

ワークショップの解説
(1)企画の意図
作品の特徴に注目する

この絵の特徴の一つは、「トローニー」だということです。この特徴を生かして、彼女はだれなのか、どういうシチュエーションか、を自由に想像するワークショップを企画しました。タイトルをつけるのも、特徴に注目させるよい方法です。
また、ポーズをとると、少女の目が二方向に向いていることが自然にわかります。「こっちを向いて。あれ、おかしいな」と子どもたちは目の向きに苦心していました。種あかしすると、「なぁんんだ、そうか、むずかしいと思ったんだ。だから、右目だけ合わせた」と言っていました。

?絵をコトバやカラダといった、ちがった方法で表現する
鴻上尚史による演劇のワークショップの方法を試してみました。
表現力のレッスン


(2)所要時間
1時間×1回

(3)使用した本
『謎解きフェルメール
謎解き フェルメール (とんぼの本)
なんだかワクワクする本。話し言葉なので、すいすい読めます。贋作や盗難についての読み物も楽しい。

フェルメールへの招待』
フェルメールへの招待
全作品を紹介しているのと、とくに著名な5作品についてポイントをしぼって解説しているのが読みやすい本。全作品を並べると、黄色いガウンや床の模様、窓や椅子や地図といった、フェルメールの好んだモチーフを指して、「ここにも!」「あ、これも!」なんていうのは、子どもは楽しいみたいです。

『美術を巡る旅ガイド』
美術を巡る旅ガイド ヨーロッパを代表する画家達 ゴッホ。フェルメール、ゴヤ、カラヴァッジョ、ムンク
オランダやフェルメールの出身地デルフトについて紹介するのにとてもいいです。マウリッツハイス美術館内の写真もあって、予習にぴったり。

(4)アフターミーティング(ワークショップ後の気づき等)
このワークショップでは、はじめてカラダを使った表現に挑戦しました。最初はとまどったような顔をしていたので、むずかしいかも、できないかもと思いましたが、結局、みんな一生懸命とりくんでいました。恥ずかしいみたいなので、講師も一緒にやるといいです。音やセリフや効果音を口で言ったほうがやりやすいんだろうかとも思ったのですが、いざやってみると、無音のパントマイムのような表現を、自分で振付、演出、主演までこなすレッスンになりました。