ゴッホ「点描の発見」(点描ってどんなふうに描かれているんだろう?)

ワークショップの目的
ゴッホとの出会い
◆点描の発見
◆自画像の発見

(1)本、画集を読みきかせて作家について知る
ゴッホってどういう人だろう?

ゴッホが描いた場所を訪ねた写真集だ。このオリーブ林や糸杉、ゴッホはこんなふうに描いた。≪夜のカフェテラス≫、黄色がきれいだね。(『ゴッホを旅する』)

ゴッホにはテオという弟がいて、テオにたくさん手紙を書いた。絵のこととか、くらしとかね。今と違ってメールなんてないから、手紙でいろんなことをお話したんだよ。手紙を読むと、ゴッホがどんなことを考えていたかわかるんだ。(『ゴッホ』)

ゴッホはね、身近な人たちの絵をたくさん描いたよ。郵便局の人、近所に住む友だち。(『はじめてであう絵画の本10 ゴッホ』)

ゴッホは自分の顔の絵もいっぱい描いてるよ。
絵を描いてたりパイプを吸ってたり、ひげがあったりなかったり、帽子もいくつも持ってたみたい。




(2)ワーク
今日はね、好きな自画像をえらんで、そっくりに描いてみよう!
今日のワークショップで大事なのはね、点描の大きさと向きと形だよ。
ちょっとぐらい顔の形がちがっちゃっても気にしない、気にしない。
点描は、こういうのもあるし、こういうのもあるよ。
大きくて荒々しい点描  ぐるぐる  周りを囲むような向きの点描



材料はこれだよ。
画用紙     画材      画集


(3)作家・作品との出会い、発見
できた?
わぁ、がんばったね、みんなすごい絵ばっかり。それで描きおわって、どう?







ゴッホは、点で絵をかくのがじょうずでとてもきような人だと思う。
いろいろな色をどんどんかさなていってできているのがわかった。頭や顔に赤やみどりが入っていました。



絵などに不思議な色やもようなどをつかうので、とても不思議な人だと思う。
ぼくは、模写をして、上から色をぬるときは、下にある色がかくれてしまうので、下の色をこくして上にたしながらぬらなきゃいけないことを発見した。



ゴッホは、絵をなによりも大切にしている人だと思う。
おこりっぽい人
ゴッホのかく絵は、絵の具をたくさんつかう。ふつうは、1色でかくところを、3色4色もつかってかく。
絵のようにかくのがむずかしくて、大きいところしかできなかった。



ゴッホは細かいところまできっちりやる人だと思う。
点の一つ一つにむだがなくて、先に下の色をつけたほうがやりやすいことがわかった。最初はどうなるかと心配だったけど上手くできてうれしかった。



ゴッホはとってもまじめそうな人。かしこそう。きむずかしそう。だけど、やさしそう。
色がとにかくたくさんつかってある。線っぽい。あまりかこまない。はなが魔女っぽい。まゆげをかかないことを発見した。

それじゃワークショップはこれでおしまい。ゴッホを観にいくのを楽しみにしてね。

国立新美術館「没後120年ゴッホ展 こうして私はゴッホになった」2010年秋に実施)

ワークショップの解説
(1)企画の意図
①作品と接する時間を多くかける

絵となかよくなるには、その絵とつきあう時間を多くかける、というのは一つの方法ではないでしょうか。模写をすると、その絵をじっくり観ることになります。そこで、ゴッホの絵の模写をしようと考えました。

②自画像から作家の人物を知る
画家の描く自画像は「どんな自分か」が表現されています。ゴッホの自画像をじっくり見ることで、ゴッホの人物にせまろうと思ったのです。

③作家の制作過程を体験する
普通、模写では色や形に注目しがちですが、今回のワークショップでは、点描の向きや大きさに注目しました。ゴッホも同じように、他の印象派の画家と親しくなって、点描の技法や色使いに工夫を凝らしています。ゴッホのこうした試行錯誤が体験できるワークショップを目指しました。

④能動的に鑑賞する
ゴッホの自画像はたくさんあるので、好きな絵を選ぶことができます。「ふーん、あの子はこういうのが好きなんだなぁ・・・」と、他の人と違う絵に取りくむことも楽しいですし、好きな絵を選ぶことで、絵に愛着を感じてほしいなと思いました。そのほうが身も入るのではないでしょうか。

(2)所要時間
1時間×3〜5回(個人差があります)

(3)応用例
①自画像以外のゴッホ作品の模写

模写がおもしろくなって、私もやってみました。
同じように点描の向きや大きさをうまく出すのを目的にしたので、下のほうの町はあまり細かく描いていません。でも感じは出ていると思うのですが・・・。≪星月夜≫は、ぐるぐるした点描が特徴的ですので、こうした模写には適していると思います。

ゴッホ作品のオマージュ
ゴッホを旅する』には、ますむらひろし市村正親の作品が載っています。ますむらひろしの絵は、ゴッホの≪ひまわり≫を元にねこがひまわりのまわりにぶらさがっています。市村正親は、自身の自画像をゴッホの自画像にあてはめて描いています。こういう絵に応用することもできそうです。

(4)使用した本

ゴッホを旅する (別冊家庭画報)

ゴッホを旅する (別冊家庭画報)

ゴッホが描いた場所を訪ねた写真集で、絵の構図そのままの写真が多数入っていて、子どもも喜んで見ていました。特にオリーブ林や糸杉の写真、≪夜のカフェテラス≫は、絵と見比べながらゴッホについて話ができました。オリーブ林の絵は、光がキラキラしてるね、なんていう子もいました。
ゴッホ (日経ポケット・ギャラリー)

ゴッホ (日経ポケット・ギャラリー)

ゴッホの手紙と絵が配置されていて、弟テオについて紹介するときに使いました。

はじめてであう絵画の本 (10)

はじめてであう絵画の本 (10)

こどもむけに解説されていて、きれいな画集です。

(5)アフターミーティング(ワークショップ後の気づき等)
時間がかかって途中で飽きちゃうかなぁと思ったのですが、意外と集中できました。途中、「つかれたら、休んでもいいんだよ」と声をかけました。もう限界かなと思ったら、早くおわらせておしゃべりしたり・・・。「そうか、つかれるのはいいのか」と、子どもが今の状態を受け入れることができます。
ワークショップ終了後、ある子に「どう? 時間かかって大変だった?」と聞くと、彼女は大きく息をはきながら「うん、でも時間かけるといいものができるなぁ!」と言っていました。充足感がえられたことに驚くとともに、大層うれしいときでした。