クレー「絵の実験」(クレーのように切ったり回したり)

ワークショップの目的
◆クレーとの出会い
◆再構成の発見

(1)本、画集を読みきかせて作家について知る
クレーってどういう人だろう?
(『クレーの絵本』を読み聞かせる)
クレーは音楽一家に生まれて、自身もヴァイオリンがとっても得意だった。音楽家になろうか画家になろうか迷ったけど、画家になることにした。音楽をモチーフにした絵もたくさん描いたよ。

(『クレーと黄色い鳥のいる風景』を読み聞かせる)
詩人の谷川俊太郎もクレーが大好きだ。クレーの絵に詩を書いている。クレヨンのスクラッチング、みんなも小さい頃やったことあるよね、クレーも同じ方法で絵を描いてるよ。黄色い鳥たち、顔だけのぞいてる鳥も、おしりだけ出してる鳥もいるね。色がきれいだ。

(『クレーの絵本』を読み聞かせる)
私が一番好きな絵の詩を読もう。「黄金の魚」という絵だ。金色の魚だよ。青い海の植物がとってもすてき。金色の魚はキラキラ輝いて見えるね。

(『パウル・クレーおわらないアトリエ』WEBサイトを見せる)
クレーは、できあがった絵を二つに切ったり、回したりして新しい絵を作った。

(2)ワーク
今日はね、ちょっとかわった紙を使うよ。薄い紙に1センチごとにブルーの点が並んでいる。この点々を使って絵を描こう。
描いたら次は、絵を切ったり回したりして絵の実験をしよう、クレーみたいにね。
材料はこれだよ。
点ポチ用紙    画材   はさみ

まずは、テーマを決めて点ポチ用紙に絵を描こう。
つぎに、絵を裏からすかしてみよう。絵に題名をつけよう。
つぎに、絵をまわしてみたら・・・?
つぎに、絵を切ったら・・・?
じゃあ、こんどは自分で実験方法を考えてやってみよう。
(3)作家・作品との出会い、発見
できた?
上段左から①最初に描いた絵 ②裏から透かしてみたら ③絵を回してみたら 
下段左から④絵を切ったら ⑤(自分で考えた実験方法)

①ふんすいのまち ②ゆきのまちみたい ③ひかっているまち 
④みずのまちみたい おはなのまち  ⑤すずみたいなまち(絵を折って)


①雪だるま ②じょうずにできたかな ③どうぶつ園のペンギンさん
④ねこととり  わたしがつくったロボット ⑤たのしい生活(もっと切ってみたら)


①太陽のようなさざんか ②つつまれる実 ③三つの島 
④山の世界  海の世界 ⑤生き物と人間がくらす島(折って透かす)


①絵の中の美術館 ②カラフルな公園 ③ひゃー落ちる〜! 
④木を温めるみんな  1人で遊ぶ ⑤にげる色たち(丸く切りとってみる)


①冬の星 ②雪のけっしょう ③きれいな時計
④にじ ゆめの中

切ったらきれいなことになりました。
ちがう作品になった。
もっと切ってみたらいろいろなどうぶつなどに見えておもしろかった。
一枚の絵にたくさんの題名と見かたができた。


それじゃワークショップはこれでおしまい。クレーを観にいくのを楽しみにしてね。
東京国立近代美術館パウル・クレー おわらないアトリエ」2011年夏に実施)

ワークショップの解説
(1)企画の意図
①作家の制作過程を体験する

普通、芸術鑑賞では完成された作品に注目しがちですが、今回のワークショップでは「画家が作品をどのように作ったのか」作家の制作過程に注目しました。クレーが再構成して作品を作ったのと同じ方法をワークショップで体験できるワークショップを目指しました。クレーもこんなふうにいろいろ実験したんだなぁと実感できます。
②新しい制作の方法を知る
作る途中で切ったり貼ったりすることはよくあることですが、一旦できあがった絵をさらに切るということは子どもにとって新鮮な行為です。こういう制作方法もあるんだ、という発見になります。

(2)所要時間
1時間×1回

(3)応用例
今回の展覧会には≪バルトロ:復讐だ、おお!復讐だ!≫が出品されていたので、≪フィガロの結婚≫の歌と組み合わせたワークショップも一旦は考えました。クレーは音楽をモチーフに作品を描いていますので、そういう方法も考えられそうです。
(4)使用した本
▽クレーの絵がたくさん載ってる。クレーをはじめて観るのにいい本。

クレーの絵本―どっちが主役? (小学館あーとぶっく)

クレーの絵本―どっちが主役? (小学館あーとぶっく)

▽色がきれい。一つの詩に対して絵がたくさん載っている。
クレーと黄色い鳥のいる風景 (おはなし名画をよむまえに)

クレーと黄色い鳥のいる風景 (おはなし名画をよむまえに)

▽こちらは絵と詩が同数、たっぷり掲載。
クレーの絵本

クレーの絵本

(5)アフターミーティング(ワークショップ後の気づき等)
このワークショップでは画集でクレーの絵をたくさん観て、ワークショップ後に実施した美術館見学ツアーでも多くの作品に触れることができました。美術館で「この絵は、ちょっとこわいけどちょっとかわいい」という子がいて、本当にそうだなぁと思いました。クレーが愛されるのはそこにあるかもしれませんが、一方でクレーの絵は慣れてないとむずかしく感じられます。絵にたくさん触れることで、このような思いが自然にわきあがってきたのではないかと思い、たくさん観るというのは大事なことだと実感した日でした。